《知っトク》中学入試 新聞こそ身近で最良の教材(後編)
◎新聞になじむ
新聞がいつでもそばにある環境をつくることが大切です。
身の回りに何があるかで、学びの量と質が決まります。
新聞には、学力はもちろん、好奇心、考える力、ものの見方などを育むのに、大きな効果があります。
こういった目に見えない底力をどれだけ蓄えているかが、学校の勉強のみならず、大人になっても、本気になったとき決定的な実力の差となって現れます。
まず子供が新聞に親しむ環境をつくること。
子供に無理強いし勧めても、新聞を読んでくれません。
親が読めば、子供も自然と興味を持ってきます。
家庭で新聞をよく話題にすると、「何が書いてあるのか?」と子供は知りたくなります。
どんな新聞でも構いません。
親が自分で読みたいものを選んでください。(もちろん、スポーツ新聞などはNGですよ。)
最初は「四コマまんが」を見るだけでも構いません。
漫画ですが、さすがに新聞、時事的な内容も取り扱っているとも多いです。
それに、典型的な起承転結、作文の構成力につながらないとも言えません。
新聞を見るきっかけになるなら十分です。
次に長文・活字が苦手な子供には、掲載写真を見せてもいいでしょう。
写真は文章以上にものを語りますし、状況を想像し、その説明文を読んでみるようにします。
スポーツ面からでも、ひとつのきっかけになります。
多くのスポーツは企業の経済活動の一部ですので、いずれ社会への関心へとつながります。
また親が気になった記事には、子供に「これ、どう思う?」と声かけしてください。
そして子供が意見を言ったら、うんと褒めてあげてください。
けっして、子供の答えに否定しないこと。
世界の常識が、子供の素直な目で見ると、案外、矛盾していたりもしますよ。
子供に毎朝、今日の天気予報を報告させるのもいいかもしれません。理科の勉強に直結です。
中学受験の参考書と考えれば、「子ども新聞」も十分に読む価値はあります。
◎新聞の活用方法
新聞の紙面構成は、一般に最初から政治・経済そして社会・文化面と続きますが、この順番にこだわる必要はなく、興味の向く記事から読ませてあげればよいでしょう。
新聞の記事は、見出し・リード(前文)・本文から出来ています。
見出しは、記事の内容を要約した短い文章のこと。
リードは、記事の概要で、要約文です。その最初の数行が記事のポイントです。
本文は、具体的な内容で、詳しく知りたいときに読み進めます。
これらの新聞の特徴は、上や前にある情報ほど重要で、下や後ろにいくほど細かくなります。
だから、記事は全部読まなくても、途中まで読めば、ある程度内容が把握できます。
いつでも手の届くところに辞書を一冊常備しておくとよいでしょう。
わからないない言葉はその場ですぐに調べられるようにしておきます。
このとき、できれば辞書で調べるのは、記事を読んだ後(自分の頭で考えた後)にします。
前後の文脈から言葉の意味を自分なりに想像することで、考える力も養われ、英語を学習する上でも、英文解釈の基礎になります。
親が教えるべきなのは、言葉の意味でなく、辞書の調べ方です。
子供が自分で調べる環境をぜひつくってやってください。
「まず自分で調べる」習慣で、自分から学んでいく姿勢が身についていきます。
地図帳もそばにおいておくと、記事ででてきた地名を地図上で確認することで、新しい発見があったり、考えが深まったりすることもあります。
例えば、この夏の最高気温の記事で、熊谷や多治見が出てきました。
この場所を調べることで、単に言葉を覚えるだけのときより記憶として定着しやすいはずです。
実際に地形を確認すること、フェーン現象への理解・関心も深まります。
一面コラム(朝日なら天声人語)には、新聞各社が培ってきた文章力が凝縮されています。
コラムは、基本的な文章作法「起承転結」も踏まえて書かれていますので、文章力(書く力)を磨くには、これらを読むことから始めるといいでしょう。
考える力を鍛えるには、読者の投稿欄も役立ちます。
他人の考えを読むことで、「自分ならどうする?」を問う訓練にもなります。
文章が書けない原因のひとつに、もともと自分の考えがないということが挙げられます。
今の時代、アナログ的なやり方ですが、気になる記事を切り抜きスクラップして、情報整理することで、子供は自分の興味や関心を客観的に把握するようになってきます。
ついでに「ニュース時事能力検定試験」(ニュース検定)なんてあるのを、知っていますか?
◎新聞を通して
人生は正解のない問題の連続です。
正解のない、あるいは答えが無数にある世界で、自分なりの答えを形作っていく力が、考える力です。
将来子供は社会人になっていくわけですが、自分なりの答えを出せない者は、今後ますます、就職する際、会社では必要とされないでしょう。
ましてや自分で起業するなど、夢のまた夢です。
考える力の有無で、将来の生きやすさも変えます。
大人になれば、学校で勉強する数学や英語など将来使うこともないかもしれませんが、答えのある学校の勉強をすることこそ、将来の生き抜く予行練習なのです。
子供のうちから新聞を読むことも、全く同じ意味を持っており、身近な優れた教材と言えます。
新聞を読むことで、ただ知識を増やすだけなく、ニュースと自分の持つ知識を結びつけることで、考える力を養ってください。
感受性の豊かな時期に、新聞の提供してくれる遠い世界の情報を知ることで、想像力も養えます。
人は全く情報がないものを想像することはできないのです。
想像力を発揮するには、想像の手がかりとなる知識を蓄積することが大切です。
活字メディア(新聞)は、情報をもとに映像を自分でイメージするしかありません。
想像力は、身の回りへの関心を生み、人の痛みや苦しみを理解する力ともなります。
新聞を読んで、ぜひ健全な懐疑心を持ち、真偽を自分で見分ける力も身につけましょう。
子供は大人に比べ知識や経験が足りませんが、かわりにたくさんの夢を持てます。
新聞を通して広い世界を見せることは、とても意味あることではないでしょうか。